格差

弁理士第一号は明治32年の138名(当時は特許代理業者という表現)になります。その後、徐々に増えるのですが、弁理士会強制加入という弁理士法の一部改正により、4389人だった弁理士が一気に2、604人になってしまいます。第二次世界大戦の影響もあり、戦後の昭和28年には926人まで減ってしまったようです。その後は増加傾向にあり、2013年には1万人を超えています。特に弁理士制度100周年を迎えた直後の2002年頃から急激に増え11年間で倍増となっています。小泉政権時のプロパテント政策による影響と思われますが、約10年で倍です。

20年くらい前までは、企業内弁理士は珍しい存在でしたが、今では、企業の知財部にも大抵、弁理士の方がいらっしゃいます。全体の3割くらいは企業内弁理士かもしれません。

さて、最近、企業で「大きな事務所じゃないと使えないよね。」というのをよく耳にします。この発言には2つのことが示唆されています。1つは、「使う」という意識。以前は、弁理士=先生という意識でしたが、企業知財部が強化されレベルが上がったことにより、「先生にお願いします。」から「自分たちでできないわけではないけど、忙しいから外部を使う。」に変わってきていることをうかがい知ることができます。本当にそうなのかどうかは不明ですが、特に大手企業の知財部の意識は変わった、と思われます。画一的な仕事ではなく、彼らを唸らせるようなプロとしての能力を発揮することが求められる時代に入りつつあることは確かです。それは特許発掘の場であったり、無効審判の為の打ち合わせの場であったりということになるのでしょうか。若しくは明細書や意見書になるのでしょうか。いずれにせよ、気付いてもらうことも大事なので、さりげなくPRする必要があるかもしれません。

もう1つは「大きい事務所でなければ」という発想です。さすがに「大きな事務所に勤務する弁理士だけが優秀だ」と思っている方はいないでしょう。この発想、企業のグルーバル化とIT化によるところが大きいと言えます。海外出願案件の増加により国内事務所では海外事務所との連絡頻度が増加しています。また、米国のみならず、EP、中国、韓国、インド、東南アジアと、対象国も増え、海外事務所とのパイプと対応力が求められています。内内よりも内外の方がはるかに利益率は高いので経営的にはありがたいはずですが、内外には、立替金の問題が常につきまといます。また、連絡上の誤解や書類のミスも考えられ、その確認とチェックの為、仕事量は膨大になります。その為、内外では事務所としての資金力、語学力、管理体制が重要になってきます。

また、IT化は企業にとっても事務所にとっても効率を考えるとありがたいはずなのですが、クライアントによってシステムやルールが違う為、事務所ではクライアント毎に対応する必要があり、事務的仕事は、ますます複雑になっています。事務所の負担は逆に増しているような気もします。しかしながら、それを乗り越えてゆかねば経営は成り立ちませんので、どこまでも対応する必要があります。

このグローバル化とIT化について言えば、個々の弁理士の能力よりも事務所全体としての管理体制が重要になってきます。特に特許事務部門の能力と手腕が発揮される部分であり、特許事務部門の強化に注力している経営者が多いような気がします。内外が今後も伸びることを考えると、事務部門では特に英語に長けた人材の需要が増し、人件費の高騰、職場での地位向上が予想されます。

特許事務所経営者の皆さんは既にそんなこと百も承知で何年も前から大手事務所も少数精鋭事務所も事務部門を含む管理体制の強化を進めていると思うので、本当は小さな事務所だから依頼できないということはないはずです。しかしながら、大手事務所と少数精鋭事務所とでは、企業の方が事務所の見学をした際に受ける印象が違うので、大手事務所に依頼した方が安心、ということになるのかもしれません。

「特許発掘や意見書の場でプロの能力を発揮する一人事務所の職人的弁理士」と「完全な事務管理体制を整えた事務所」を天秤にかけた場合、判っていても、管理体制に軍配を上げざるを得ないというのが本音なのでしょうね。

結果的に事務所の格差はますます広がるだろうと思います。規模や受任件数、クライアント数ももちろんですが、それらに比例して資金面や管理体制においても同様のことが言えます。少数精鋭事務所は内外や外内に走らず、内内に特化。個々の弁理士能力で勝負するといった方針をとるなどの工夫が必要になるのではないでしょうか。

とは言え、弁理士本来の能力よりも管理面を重視するといった流れになってしまうと、1件の出願に300万円くらい平気で報酬を払うという、バブルに沸く米国IT企業などは、ある意味全く逆の方向に注力しており、企業知財部は注意が必要です。

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